現場フレーズ

英語が聞き取れなかったときの立て直し方 — 聞き返す・書いてもらう・見せてもらう

公開 · Hiyu Lab 管理栄養士

自分が話す英語は準備できます。準備できないのは、相手の返事です。医療現場で本当に困るのは「言えない」より「聞き取れない」ほうで、しかもこちらは聞き取れないまま進むわけにいきません。聞き取れなかったときに実際どう立て直しているかを、順番に書きます。

聞き返す 1〜2回まで 文字にする 書いてもらう 見せてもらう 写真・画像で確認 人に頼る 家族・医療通訳 同じ手を3回繰り返さない。1段ずつ次に移る
聞き取れなかったときの立て直しの順番(Hiyu Lab 作成)

前提:聞き返しは失礼ではない

最初に確認しておきたいのは、医療現場での聞き返しは安全のための確認であって、失礼ではないということです。分からないまま笑顔でうなずくほうが、はるかにリスクがあります。

とくに、痛みの部位、食物アレルギー、薬の名前、数値。このあたりは聞き間違いが事故に直結するので、何度でも確認して構いません。相手も、自分の体に関わる確認を嫌がることはまずありません。

第1段階:聞き返す(ただし1〜2回まで)

まずは素直に聞き返します。ポイントは、何が分からなかったかを具体的に言うことです。「もう一度」だけだと、相手は同じ速さで同じことを繰り返すだけになりがちです。

Sorry, could you say that again more slowly?
すみません、もう少しゆっくり言っていただけますか?
I didn't catch the last word. Could you repeat just that part?
最後の単語が聞き取れませんでした。そこだけもう一度いいですか?
So you mean ..., is that right?
つまり…ということですね?

3つ目の「復唱して確認する」が、いちばん効きます。こちらの理解を相手に見せるので、ずれていればその場で訂正してもらえます。アレルギーや痛みの部位は、必ずこの形で確認します。

ただし、同じ手を3回繰り返さない。2回聞き返して通じなければ、それ以上は同じ結果になります。粘るより、次の手段に移ったほうが早く解決します。実際、聞き返しを重ねても通じず、結局そのまま進めてしまった経験があります。

第2段階:書いてもらう

音で取れないものは、文字にするのがいちばん速い解決です。固有名詞・食材名・薬の名前・数字は、ここで一気に片づきます。

Could you write it down for me?
書いていただけますか?
Could you type it on your phone?
スマホで入力していただけますか?
How do you spell it?
綴りを教えていただけますか?

メモ帳とペンを持って訪室するだけで、この手が常に使えるようになります。相手のスマホに入力してもらう方法も有効で、母語で入力してもらえば翻訳にもかけられます。

覚えておきたいのは、こちらが聞き取れない音は、翻訳アプリの音声入力でも拾えないことが多いという点です。アプリを挟めば解決するわけではないので、音から文字への切り替えは早めに判断します。

第3段階:見せてもらう・見せる

食べ物や物の名前は、画像がいちばん速いことがあります。実際、言葉で伝わらなかったときに、商品や食材を画像検索して画面を見せる方法で解決したことが何度もあります。

原始的に見えますが、食べ物に関しては「見せる」が最速のことが多いです。言い換えや筆談と並ぶ、立派な手段だと思っています。

この段階で便利なのが指差しボードです。厚生労働省の補助事業として運営されている「外国人患者受入れ情報サイト」に、指差しボードや多言語の医療問診票、救急時の情報収集シートが分野別にまとまっています[1]。あらかじめ病棟に1部置いておくと、とっさのときに手が伸びます。

第4段階:人に頼る

ここまでで解決しないとき、あるいは最初から内容が重いときは、人に頼ります。判断の目安は誤解したときの影響の大きさです。

家族・付き添いの方

日常的な聞き取りであれば、通訳できるご家族が来院されるタイミングを待つ、というのは現実的な選択です。待てる内容かどうかで判断します。

Is there someone in your family who can help us talk?
通訳を手伝っていただけるご家族はいらっしゃいますか?
I'll come back when your family is here.
ご家族がいらっしゃるときに、またうかがいます。

医療通訳

一方で、病状説明・同意取得・治療方針の確認のように誤解が患者さんの不利益に直結する場面は、家族通訳や翻訳アプリではなく医療通訳を使うのが原則です。院内に専任の通訳がいない施設でも、電話で依頼できる窓口があります。AMDA国際医療情報センターは9言語に対応しており、相談と遠隔通訳の両方を扱っています[2]。依頼の手順は、必要になってから調べると間に合わないことがあるので、先に確認しておくことをおすすめします。

口頭で確認しきれない項目は、記入式の様式を渡して書いてもらうほうが確実なこともあります。

聞き取れないまま進めると、どうなるか

「とりあえず安全側に倒す」は正しい判断ですが、代償があります。食事の制限について聞き取れなかったとき、結局いちばん厳しい制限をかけることになりました。

そうすると、使える食材が一気に狭まり、調理室へ出す指示も1つずつ細かくなります。その状態が入院期間ぶん続きます。患者さんの側も、本来食べられたはずのものが出てきません。5分の聞き取りを諦めたことで、その後ずっと負荷が残るという構図です。

だからこそ、聞き返す・書いてもらう・見せてもらう・人に頼る、の4段を順に使い切る価値があります。

準備しておけること

どれも英語力とは関係のない準備です。聞き取りの問題は、英語力だけでは解決しません。

まとめ

聞き返しは1〜2回まで。通じなければ、音から文字へ、文字から画像へ、それでも駄目なら人へ。同じ手を繰り返さず1段ずつ移るのが、いちばん速い立て直し方です。誤解が許されない場面は、最初から医療通訳に切り替えてください。

参考文献

  1. 外国人患者受入れ情報サイト「多言語ツール」(厚生労働省補助事業). 指差しボード・多言語医療問診票・救急時の情報収集シートなどを分野別に収載. internationalpatients.jp
  2. AMDA国際医療情報センター. 多言語の電話医療相談・遠隔医療通訳(9言語対応). amdamedicalcenter.com
Hiyu Lab
Hiyu Lab 管理栄養士

急性期病院で臨床栄養業務に従事する臨床11年目の管理栄養士。NST専従の経験があり、国内外の学会発表と英語論文の執筆を日常的に行っています。RD English Lab の設計と、臨床栄養・論文読解に関する記事を担当しています。プロフィール / 運営について / コンテンツ制作・編集方針

← 記事一覧に戻る