臨床栄養

栄養評価ツールの英語 — MNA-SF・MUST・SARC-F・GLIM・PG-SGA の項目を患者さんに聞く

公開 · Hiyu Lab 管理栄養士

栄養評価ツールの名前と総論は、日本語の研修でも学びます。現場で詰まるのはその先、各項目を患者さん本人に英語で聞くところです。ツールは英語で作られているので用語は決まっているのですが、それをそのまま読み上げても通じません。実際に詰まりやすい項目を中心に整理します。

1. 体重の変化 減ったか/どれくらい/意図的か 2. 摂取量の変化 減ったか/半分より多いか少ないか/理由 3. 測定の声かけ 測ってよいか/痛くない/すぐ終わる 4. 利き手と握力 字を書く手はどちらか/強く握って 5. 食文化・制限 避ける食材/どこまでが対象か 正式名称より、この5つを患者さんに聞けることが先
患者さんに直接聞く項目の優先順位(Hiyu Lab 作成)

まず、ツールの位置づけを英語で分けておく

英語では、ふるい分け・詳細評価・診断がはっきり別の語になります。日本語ではどれも「評価」で済ませがちなので、報告のときに混ざりやすいところです。

She was screened as at risk of malnutrition.
低栄養のリスクありとしてスクリーニングされました。
He meets the GLIM criteria for malnutrition.
GLIM基準で低栄養に該当します。

GLIM は、体重減少・低BMI・筋肉量減少という表現型基準(phenotypic criteria)と、食事摂取量の減少・炎症という病因基準(etiologic criteria)を組み合わせ、それぞれ1つ以上を満たすと低栄養と診断する枠組みです[1]。英語の項目名がそのまま国際的な共通語になるので、ここを覚えておくと報告が楽になります。

詰まりやすい項目1:半年前の体重

体重減少率を出すには、過去の体重が要ります。ところが「半年前の体重」は、日常会話ではまず出てこない言い方で、こちらも相手も戸惑います。

How much did you weigh six months ago?
半年前の体重はどれくらいでしたか?
Have you lost weight recently without trying?
最近、意図せず体重が減りましたか?
How many kilograms have you lost?
何キロくらい減りましたか?

コツは、正確な数値を取りにいかないことです。覚えている人のほうが少ないので、まず「減ったかどうか」を聞き、減っていれば「服がゆるくなったか」「ベルトの穴が変わったか」で量を推定します。

Have your clothes become loose?
服がゆるくなりましたか?

単位にも注意が要ります。出身国によってはポンド(pound)が基準なので、kg で答えが返らないことがあります。In kilograms or pounds? と確認するか、数字を聞いてから単位を尋ねるほうが安全です。

詰まりやすい項目2:上腕三頭筋皮下脂肪厚と下腿周囲長

身体計測の項目名は、英語で言おうとすると一番詰まるところです。

triceps skinfold thickness (TSF)
上腕三頭筋皮下脂肪厚
calf circumference (CC)
下腿周囲長
mid-upper arm circumference (MUAC)
上腕周囲長

ただし、患者さんにこの正式名称を言う必要はありません。必要なのは「どこを測るか」が伝わることです。実際の声かけは、もっと単純で構いません。

I'd like to measure your arm. Is that okay?
腕を測らせていただいてもよろしいですか?
May I measure around your calf?
ふくらはぎのまわりを測ってもいいですか?
This doesn't hurt. It only takes a moment.
痛くありません。すぐ終わります。

ここで一言添えられるかどうかが大きいです。説明がないまま黙ってメジャーを出すと、相手は何が始まるのか分かりません。This doesn't hurt. の一文だけでも、表情が変わります。

calf は翻訳を信用しない。calf には「ふくらはぎ」と「子牛」の両方の意味があり、翻訳アプリに通すと「子牛の周径」のような表示になることがあります。身体計測の用語は、アプリ任せにせず事前に確定させておくほうが安全です。

詰まりやすい項目3:利き手

握力の測定では、どちらの手で測るかを決める必要があります。SARC-F のような筋力に関わるスクリーニングでも、結果の解釈に関わる情報です。

Which hand do you write with?
どちらの手で字を書きますか?
Are you right-handed or left-handed?
右利きですか、左利きですか?
Please squeeze this as hard as you can.
これをできるだけ強く握ってください。

「利き手」を dominant hand と言うこともできますが、患者さんには「字を書く手」で聞くほうが確実に通じます。

詰まりやすい項目4:食欲と摂取量

MNA-SF や PG-SGA には、食欲の低下や摂取量の変化を問う項目があります[2]。ここは数字で答えてもらうより、比較で聞くと答えが返りやすくなります。

How is your appetite these days?
最近、食欲はいかがですか?
Are you eating less than before?
以前より食べる量が減っていますか?
About how much of your meal do you finish?
食事はどれくらい食べられていますか?
Half? Or less than half?
半分くらいですか? それより少ないですか?

最後のように選択肢で聞くのが有効です。「どれくらい?」というオープンな質問は、言語が違うと答えにくくなります。半分か、それ以下か。この二択なら、言葉が通じにくくても身振りで答えられます。

あわせて、食べられない理由も聞いておくと介入につながります。

Is there anything that makes it hard to eat?
食べるのが難しい理由は何かありますか?
Do you have pain, nausea, or trouble swallowing?
痛み、吐き気、飲み込みにくさはありますか?

詰まりやすい項目5:宗教・食文化

評価ツールの標準項目には入っていませんが、外国人患者さんの場合はここを聞かないと介入計画が立ちません。摂取量が少ない理由が、食欲ではなく「食べられないものが出ている」ことだった、という場合があるからです。

Are there any foods you avoid for religious reasons?
宗教上の理由で避けている食べ物はありますか?
Does that include seasonings used in cooking?
調理に使う調味料も含みますか?

この聞き取りは奥が深いので、別記事にまとめています。

チームに英語で報告するとき

評価結果を共有するときは、数字を主語にすると文が短くなり、言い間違えても立て直しやすくなります。

Body weight has decreased by 6% over three months.
体重は3か月で6%減少しています。
Calf circumference is 29 cm, below the cutoff.
下腿周囲長は29cmで、カットオフを下回っています。
Energy intake is around 50% of the estimated requirement.
エネルギー摂取量は必要量の約50%です。

数字を出すときは、期間と比較対象をセットにします。「6%減った」だけでは、何か月で、元の体重に対してなのか、標準体重に対してなのかが伝わりません。

評価ツールの英語を覚える順番

ツールの項目は多いように見えますが、患者さんに直接聞く項目は限られています。優先順位はこうなります。

  1. 体重の変化(減ったか/どれくらい/意図的か)
  2. 食事摂取量の変化(減ったか/どれくらい/理由)
  3. 測定の声かけ(測ってよいか/痛くない/すぐ終わる)
  4. 利き手と握力(字を書く手/強く握って)
  5. 食文化・制限(避ける食材/許容範囲)

この5つが言えれば、スクリーニングはひととおり回せます。項目の正式名称を覚えるのは、チームへの報告が必要になってからで間に合います。

まとめ

ツールの正式名称より、患者さんへの聞き方が先。体重と摂取量は「正確な数字」ではなく「減ったか/半分より多いか少ないか」で聞く。身体計測は「痛くありません」の一言を添える。利き手は「字を書く手」で聞く。報告は数字を主語にして、期間と基準を必ず添える。

参考文献

  1. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition — A consensus report from the global clinical nutrition community. Clinical Nutrition. 2019;38(1):1–9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002
  2. Nestlé Nutrition Institute. MNA® — Mini Nutritional Assessment(65歳以上を対象とした栄養スクリーニング・評価ツール). mna-elderly.com
栄養評価の英語は、RD English Lab に収録しています

栄養評価・食事療法・栄養指導・NST連携の英語を、場面別の単語とフレーズ、分岐式の模擬会話で練習できます。

RD English Lab を開く
Hiyu Lab
Hiyu Lab 管理栄養士

急性期病院で臨床栄養業務に従事する臨床11年目の管理栄養士。NST専従の経験があり、国内外の学会発表と英語論文の執筆を日常的に行っています。RD English Lab の設計と、臨床栄養・論文読解に関する記事を担当しています。プロフィール / 運営について / コンテンツ制作・編集方針

← 記事一覧に戻る