栄養評価ツールの英語 — MNA-SF・MUST・SARC-F・GLIM・PG-SGA の項目を患者さんに聞く
栄養評価ツールの名前と総論は、日本語の研修でも学びます。現場で詰まるのはその先、各項目を患者さん本人に英語で聞くところです。ツールは英語で作られているので用語は決まっているのですが、それをそのまま読み上げても通じません。実際に詰まりやすい項目を中心に整理します。
まず、ツールの位置づけを英語で分けておく
英語では、ふるい分け・詳細評価・診断がはっきり別の語になります。日本語ではどれも「評価」で済ませがちなので、報告のときに混ざりやすいところです。
- screening:リスクのある人を拾い上げる(MNA-SF、MUST、SARC-F)
- assessment:拾い上げた人を詳しく評価する(PG-SGA)
- diagnosis:基準に当てはめて低栄養と判断する(GLIM)
GLIM は、体重減少・低BMI・筋肉量減少という表現型基準(phenotypic criteria)と、食事摂取量の減少・炎症という病因基準(etiologic criteria)を組み合わせ、それぞれ1つ以上を満たすと低栄養と診断する枠組みです[1]。英語の項目名がそのまま国際的な共通語になるので、ここを覚えておくと報告が楽になります。
詰まりやすい項目1:半年前の体重
体重減少率を出すには、過去の体重が要ります。ところが「半年前の体重」は、日常会話ではまず出てこない言い方で、こちらも相手も戸惑います。
コツは、正確な数値を取りにいかないことです。覚えている人のほうが少ないので、まず「減ったかどうか」を聞き、減っていれば「服がゆるくなったか」「ベルトの穴が変わったか」で量を推定します。
単位にも注意が要ります。出身国によってはポンド(pound)が基準なので、kg で答えが返らないことがあります。In kilograms or pounds? と確認するか、数字を聞いてから単位を尋ねるほうが安全です。
詰まりやすい項目2:上腕三頭筋皮下脂肪厚と下腿周囲長
身体計測の項目名は、英語で言おうとすると一番詰まるところです。
ただし、患者さんにこの正式名称を言う必要はありません。必要なのは「どこを測るか」が伝わることです。実際の声かけは、もっと単純で構いません。
ここで一言添えられるかどうかが大きいです。説明がないまま黙ってメジャーを出すと、相手は何が始まるのか分かりません。This doesn't hurt. の一文だけでも、表情が変わります。
詰まりやすい項目3:利き手
握力の測定では、どちらの手で測るかを決める必要があります。SARC-F のような筋力に関わるスクリーニングでも、結果の解釈に関わる情報です。
「利き手」を dominant hand と言うこともできますが、患者さんには「字を書く手」で聞くほうが確実に通じます。
詰まりやすい項目4:食欲と摂取量
MNA-SF や PG-SGA には、食欲の低下や摂取量の変化を問う項目があります[2]。ここは数字で答えてもらうより、比較で聞くと答えが返りやすくなります。
最後のように選択肢で聞くのが有効です。「どれくらい?」というオープンな質問は、言語が違うと答えにくくなります。半分か、それ以下か。この二択なら、言葉が通じにくくても身振りで答えられます。
あわせて、食べられない理由も聞いておくと介入につながります。
詰まりやすい項目5:宗教・食文化
評価ツールの標準項目には入っていませんが、外国人患者さんの場合はここを聞かないと介入計画が立ちません。摂取量が少ない理由が、食欲ではなく「食べられないものが出ている」ことだった、という場合があるからです。
この聞き取りは奥が深いので、別記事にまとめています。
チームに英語で報告するとき
評価結果を共有するときは、数字を主語にすると文が短くなり、言い間違えても立て直しやすくなります。
数字を出すときは、期間と比較対象をセットにします。「6%減った」だけでは、何か月で、元の体重に対してなのか、標準体重に対してなのかが伝わりません。
評価ツールの英語を覚える順番
ツールの項目は多いように見えますが、患者さんに直接聞く項目は限られています。優先順位はこうなります。
- 体重の変化(減ったか/どれくらい/意図的か)
- 食事摂取量の変化(減ったか/どれくらい/理由)
- 測定の声かけ(測ってよいか/痛くない/すぐ終わる)
- 利き手と握力(字を書く手/強く握って)
- 食文化・制限(避ける食材/許容範囲)
この5つが言えれば、スクリーニングはひととおり回せます。項目の正式名称を覚えるのは、チームへの報告が必要になってからで間に合います。
ツールの正式名称より、患者さんへの聞き方が先。体重と摂取量は「正確な数字」ではなく「減ったか/半分より多いか少ないか」で聞く。身体計測は「痛くありません」の一言を添える。利き手は「字を書く手」で聞く。報告は数字を主語にして、期間と基準を必ず添える。
参考文献
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition — A consensus report from the global clinical nutrition community. Clinical Nutrition. 2019;38(1):1–9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002
- Nestlé Nutrition Institute. MNA® — Mini Nutritional Assessment(65歳以上を対象とした栄養スクリーニング・評価ツール). mna-elderly.com
栄養評価・食事療法・栄養指導・NST連携の英語を、場面別の単語とフレーズ、分岐式の模擬会話で練習できます。
RD English Lab を開く